自由英作文の書き方と予想される出題テーマを含む,入試直前期の勉強法について,以下のアドバイスを掲載します。
センター試験の英語は平均点がアップして 120点台に戻りました。ほぼ昨年通りの出題傾向ですが,第二問,特にAとB,が易化したことによるのではないかと思われます。一方,受験生にとって鬼門とも言える国語は,予想された通り,易化した昨年の揺り戻しで,特に現国がかなり難化して平均点が20点以上下がりました。私大入試や国公立の二次試験では,国語はさらに手強い科目であり,国語の得点が合否を左右しかねません。
とはいえ,英語の配点が国語より低いということはありませんから,英語で一定以上の得点をあげることが必須の要件であることに変わりはありません。国公立は言うまでもなく,私大でも一部記述形式の問題を出す大学が少なからずありますが,従来の英文和訳問題,説明問題,要約問題とは別に,和文英訳型の英作文に代わって,あるいは加えて,いわゆる「自由英作文」を出題する大学・学部が増えていることは周知の事実です。会話文の出題が増えているのも顕著な傾向ですが,その一方,「正誤判定問題」「整序作文」という,記述式とはかなり対照的な形式の問題も逆に増えています。一言で言うと大学・学部間で出題傾向に相当な差があるわけです。
そのことが「阿佐谷英語塾」のコンテンツペ-ジへのアクセスにも表れています。一昨年までは,入試の配点を反映してか,試験が始まっても「英語長文問題」へのアクセスが多かったったのですが,昨年はじめて,この時期「自由英作文」へのアクセスが「英語長文問題」へのアクセスとほぼ同数になりました。ところが今年は,すでに「自由英作文」へのアクセスが「英語長文問題」へのアクセスを大きく上回っています。(ただし,11月10日にホームページの移転=アドレスの変更を余儀なくされた後,検索エンジンでの表示順位が著しく降下していたことの影響も考慮する必要があるかもしれませんが。)大学が「英語を書く力」を求めていることに対する受験生の意識がさらに高まってきたことは間違いありません。ただし「意識が高まること」即「実際に書く力が付くこと」ではありませんから,少なからぬ受験生が,最後まで不安を抱えたまま試験に臨むことになるのではないかと思います。
検索に用いられている語句の中には「自由英作文 書き方がわからない」「自由英作文 書く内容が浮かばない」さらには「自由英作文 捨てる」といったものさえ含まれています。「捨てる」というのは究極の選択ですが,これも時には止むを得ないことかもしれません。ただしあくまでも,英語を含む全体の合格点ラインが低目であること,自由英作文以外の英語の問題で得点できること,あるいは他の科目で英語以上の得点が見込める場合に限られることです。したがって,最後まで頑張って「自由英作文」で一点でも多く得点しようと考えている人に,この時期,最後のアドバイスをします。ただし,以下に述べることはごく基本的な一般論であり,満点狙いのようなレベルの人には当てはまらないことを断っておきます。もっとも満点を狙えるような人はあくまでも例外中の例外だと思いますが。
・自由英作文の書き方と採点基準に書いたとおり,「自由英作文」は「和文英訳」と同様,あくまでも英語力の試験です。もちろん内容が支離滅裂で意味不明であればほんど,あるいはまったく得点できません。内容は意味不明だけれども英語としてはそれなりにしっかり書けているというようなことは通常はあり得ないからです。そして内容の難易度は大学によって著しくことなります。たとえば「四季のなかでどの季節が一番好きか,またその理由を書きなさい」とか「夏休みに行くのは海と山のどちらがよいか,その理由とともに述べなさい」という問題で,書く内容が浮かばない人はいないでしょう。ただし,日本語であればすらすらと書けるこうしたテ-マであっても,英語の語数が100語程度となると,ミスを犯さずに書くのはけしって容易ではありません。要するに,ごく基本的な,文字通り中学生レベルの表現で,減点されない英語を書けるかどうかの勝負になります。
・一方,最難関大学で出題される「安楽死は許されるか否か,二つ以上の理由を挙げて自分の考えを述べなさい」とか「外国人労働者を受け入れるべきかどうか,適切な理由とともに自分の考えを述べなさい」というテ-マになると,日本語で答えるのも容易ではなくなります。実質的に日本語の「ミニ小論文」と同じです。まったく関係のないことを書けば,いくら英語としては誤りがなくても,せいぜい零点を免れるくらいの得点しかできないでしょう。この場合には,書く内容がある程度浮かぶかどうかの勝負になります。
・しかし,その場合であっても,高度な内容を高度な英語表現で書こうとすれば,ほとんどの受験生の手に余ります。内容的には,筋は通ってはいるがごく基本的・常識的なことを,平易な英語で書けばよいのです。ただし最低限の語彙と文法・構文の知識が必要になりますから,中学生レベルの英語で書くのは容易ではありません。具体的に言えば,分詞構文や過去完了時制などを用いる必要はありませんが,課題文によっては仮定法は必要になるかもしれません。ただし常に必要というわけでもありません。つまり,多様なテ-マについての最低限の背景知識とキ-ワ-ドを仕込んでおけば,英語自体はごく平易でもよいのです。求められるのは,難しいテ-マを平易な言葉で身近な問題として説明する能力だということになります。
・そう言われても,阿佐谷英語塾の「解答例」はずいぶん難しいことを,難しい英語で書いていると思う人がいるかもしれませんが,それはある程度当然です。ここは英語専門塾のサイトですから,大学入試で合格点・高得点を取れないような「解答例」を提示すれば,逆に羊頭狗肉になりかねません。提示しているのは,最も優秀な受験生であっても参考になるレベルの解答です。ただし,単語に関しては(最)難関大学の受験生が読めないようなレベルの単語は使っていません。むしろ平易な語を用いることを基本にしています。要は,各自の力に応じて参考にしてくれればよいのです。むしろ,多様な今日的なテーマに関する背景知識とキーワードを得る材料として利用してくれればよいと思います。他大学・学部の過去問から得る知識が最も実戦的だからです。
・最後に出題が予想されるテーマですが,過去に何度も出題されている「英語の早期教育・公用語化」「成人年齢の引き下げ」「読書の重要性」「既存のメディア(新聞)とインターネット」「移民労働者の受入れ」「安楽死」「臓器移植」「オリンピック」「10年後の自分」「〇〇年後の社会・世界」に加えて,最も汎用性が高いのは,やはり近未来論でしょう。安倍政権が掲げる「一億総活躍社会」がテ-マになるかどうかは別として,「少子高齢化」「経済格差と教育格差」「老老介護」「女性と高齢者の活用」「人工知能とロボット(奪われる雇用,自動運転車・自動通訳)」そして「トランプ現象」といったことはある程度イメージしておいたほうがよいと思います。本当は「グローバリズムと資本主義の未来」「TPP・自由貿易と保護貿易」「多国籍企業と国家・国境の消滅」「英語の世界共通語化・情報と価値の一元化」「管理社会とロボットによる人間の支配」といった問題が最も切実な近未来の問題ですが,そこまでの全体像を視野に入れている大学の(英語の)先生もそう多くはないので,小論文を受ける人を別とすれば,そこまで考えの及ぶ人,ある程度イメージの浮かぶ人が考えればよいでしょう。